建築基準法改正で困ったことに

山口棟梁の今の現場も終盤を迎え、これからは我が家に全力投球してくれることになる。こちらは相変わらずプランニングで七転八倒。もう1年以上奮闘している。山口棟梁が描き直してくれた図面が山のように積み上がっている。でもその甲斐あって、プランがまとまってきた。ようやく建築確認に進めるぞと考えていたら、思わぬハードルが現れた。建築基準法の改正だ。

 

ここで少し、伝統構法と建築基準法について説明が必要になる。伝統構法は読んで字のごとく、全国各地で昔から伝わる住宅工法で、その土地の気候風土や採れる木材に合わせて、何百年も掛けて大工が工夫を重ねながら継承してきたものだ。かつては当たり前だった工法が、実は建築基準法ではしっかり位置づけられていない。というよりも、普通の住宅のように建てようと思うと、違法になってしまう。

 

なぜか。建築基準法は、戦後の住宅不足を解消するために、大工の腕に左右されずに容易に一定品質以上の住宅が建設できるよう、部材の仕様や工法の基準を設けてきた。その際、欧米流の剛構造の思想が採用され、筋交いや接合金具の使用が義務づけられてしまった。

 

筋交いも接合金具も用いない、柔構造を特徴とする伝統構法の住宅は、基準に合致しなくなってしまったのだ。最低水準をクリアさせるための法律が、大工の高度な職人技で建てる伝統的な住宅を閉め出してしまった。 

 

しかし数年前、「限界耐力計算法」という構造計算を行って、耐震性を個別に証明できれば伝統構法で建ててもよいということになり、山口棟梁はその計算をして合法的に伝統構法の家を建ててきた。我らの家も、同じように進めようと考えていたのだが、建築基準法が改正されて、耐震性の証明が難しくなってしまった。

 

今回の改正は、マンションの耐震偽装問題が発端であり、そのココロは、耐震偽装できないようにチェックを二重化するというもの。構造計算は適合判定機関のチェックを通らないとダメということになった。普通の木造住宅は構造計算は不要なので、この改正の影響を受けないのだが、伝統構法では限界耐力計算法による構造計算が必要なので、適合判定機関のチェックを受けることになってしまうのだ。

 

二重チェックになるので、費用も時間も掛かる。伝統構法の住宅の構造計算は全国でも事例がとても少なく、審査する側も対応できるところが少ないと言われる。ただ心地よい家を建てたいだけなのに、簡単にはやらせてもらえない・・・。